国内外を牽引する研究と伝統が1つに
英語教育学は、外国語としての英語の習得や指導に関して理論と実践を統合した学術的研究、および教室における指導者養成研究を行う分野である。
本学の人文社会科学研究科では英語教育研究者の養成を中心とする一方、教育研究科では高等学校英語教員を目指した実践的な人材育成を行ってきた。しかし、理論と実践の統合が求められる英語教育学においては、その区分が必ずしも明確ではない。学位プログラム化を機に、同じスタッフが指導してきた両研究科の英語教育学分野を統合することにより、より高い次元の大学院教育を目指す。
前期2年後期3年で博士号取得を目指す
人文社会科学研究科の英語教育学分野は、平成18年3月に前身である現代文化・公共政策専攻で初の博士号取得者を出して以来、この10年強で課程博士号29名、論文博士号1名、修士号46名を送り出してきた。現在は、20名の在籍生(後期課程10名、前期課程10名)を有している(2021年3月現在)。原則として修士号は前期2年で、博士号は後期3年で取得できるよう指導にあたっている。
これまでに、大学専任教員32名をはじめとして、高等学校教員ほか多くの有為な人材を輩出してきた。各研究分野において一握りの極めて優秀な院生だけが選ばれる日本学術振興会特別研究員への採用も22名を数え(DC1が12名、DC2が8名、特別研究員PD1名、海外特別研究員1名)、極めて高い採択率を誇っている。また、日本学術振興会育志賞受賞、英検研究助成入賞、教科書研究センター助成受賞、国内主要学会(全国英語教育学会、大学英語教育学会、外国語教育メディア学会、日本言語テスト学会など)での学会賞受賞、国際学会(英国応用言語学会)での最優秀ポスター発表賞などの受賞歴も誇る。
理論と実践の統合
現在社会が求めている実践力のある英語教育学研究者、あるいは理論的な土台を持つ英語科教員を輩出するため、研究者養成教育と実践的な人材育成を統合し、本プログラム担当教員も積極的に理論と実践に関わり、その統合を学生と共に体感する。
授業実践を行うにあたっては、実践の根拠となるものを研究成果から導き、普遍の真理として一般化して説く必要がある。一方、研究においても、教室という実践現場における目的を見失わず、難しい理論や成果をやさしく噛み砕いて伝える努力が必要である。このように教室現場の実践から真摯に学んで理論を極め、かつ理論に裏付けされた確かな実践の提案が出来る人材を養成する。
育成を目指す人材像は、理論と実践に基づいた授業力と教材開発能力を有し、その基盤となる英語教育学における幅広いテーマの研究力、また研究指導能力を身につけた者。さらに、高度専門職業人としてのリーダーにふさわしい確かな英語力と授業力を有し、ICTも活用しながら英語教育学の高度な教員養成・研修を担う能力を身につけた者である。課程修了後の進路としては、大学・短大・高専教員、研究所研究員、教育行政職員、中学高等学校教員、各種テスト作成機関、教育関連会社などの専門職が開かれている。
修得すべき知識・能力は、以下の通りである。
(前期課程)
・学校内外の英語教育諸課題に、同僚と協働し、中心となって問題解決にあたる能力
・高度専門職業人としてのリーダーにふさわしい、確かな英語力と授業力
・教室内外の問題意識や課題を的確に把握し、自ら改善や解決を試みる力
・後期課程における研究者養成のための基礎的な研究能力
(後期課程)
・より高い資質を有する英語教員の養成・研修を担う能力
・理論と実践に基づいた授業力と教材開発能力
・基盤となる学問分野の研究推進力
・幅広い研究テーマの研究指導能力
理論と実践を統合するカリキュラム
本プログラムは、以下のカリキュラムをもとに、現職教員および英語教育への明確な意欲を有する者を対象に、英語教育学分野の高度な教員養成と研究者育成を目指す。
(前期課程)
・英語教育学IAB.XIIAB 研究と実践の土台となる理論を学ぶ。
・英文法研究I, II 授業実践の土台となる英文法を学ぶ。
・英語圏の文化・文学I, II 授業実践の土台となる文化文学を学ぶ。
・英語教育学演習I.XII 確かな英語力と授業力の修得を目指す。
・英語教育学研究IAB.IVAB 英語教育学の研究手法を学ぶ。
・英語教育学論文演習I, II 修士論文執筆を目指す。
(後期課程)
・英語教育学特別論文演習I A B.IIIAB 博士論文執筆を目指す。なお、前期課程には14条対応科目を設け、後期課程は指導教官による論文演習のみとするなど、現職社会人が特定の時間または時期に講義・研究指導を受けることを可能とした。
主たる就職先・進路(*旧組織である現代語・現代文化専攻言語情報分野のものを含む)
前期課程修了生:博士後期課程への進学、中高の英語教員、政府官庁など
後期課程修了生:大学教員など